【取材レポート第二弾】
「拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」
大阪中之島美術館<大阪市>

ルネ・マグリット《レディ・メイドの花束》1957年 大阪中之島美術館蔵
大阪中之島美術館で開催中の「拡大するシュルレアリスム」展。レポート第一弾は速報でしたが、今回は展覧会の詳細をお届けします。
シュルレアリスムがお好きな方はもちろん、難しそうかな、と思ってる方もどうかお付き合いください。
シュルレアリスムはここから始まった

アンドレ・ブルトン《シュルレアリスム宣言・溶ける魚》(初版本)1924年 岡崎市美術博物館蔵
それは、さりげなく展示されているこの一冊の本から始まりました。アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」。
シュルレアリスムと聞くとダリやマグリットなど絵画作品を思い起こす人が多いと思いますが、スタートは文学だったんです。
シュルレアリスムは、夢や無意識の世界を探求し理性の奥に隠された「超現実」をさらけ出し、理性にとらわれない真の自由を表現する運動。
この本に収録の「溶ける魚」はその短編集で、頭に浮かんだ言葉を何の作為もなく書き連ねていく「オートマティスム」という手法で書かれています。
「シュール」と「シュルレアリスム」

会場風景
心の奥底に隠された「真の現実」を表現するのがシュルレアリスム。
私たちが「奇妙」「不思議」の意味で使う「シュール」とは異なります。
無意識の世界の追求も「奇妙」かもしれませんが、「シュール」はシュルレアリスムの一面にすぎないのです。
本展は、文学から出発したシュルレアリスムが絵画、写真、オブジェへ広がり、やがて芸術という枠を超えて広告やファッション、インテリアなど社会全般へと拡大していくさまを視覚化する展覧会です。
迫力満点!シュルレアリスム絵画

展示風景
エルンスト、ダリ、ミロ...。シュルレアリスムの絵画が並ぶ展示室は迫力十分!マグリットの傑作が2点も並ぶさまは壮観です。
近くで観るのもいいけど、少し離れると一層くっきり絵が映えるのが不思議。ダリの言う通り「シュルレアリスムは奇妙な毒」なのです。

オスカル・ドミンゲス《無題ーデカルコマニー》1953年 横浜美術館蔵
こちらは、シュルレアリスム絵画の技法のひとつ「デカルコマニー」を最初に取り入れたドミンゲスの作品。
紙と紙の間に絵具を挟み、ぐっと押しつけると意図しない模様ができますよね。
デカルコマニーはフランス語で転写を意味するdécalguerが由来。
できた模様は偶然や無意識の結果なので、無意識の世界を表現しようとするシュルレアリスム作家たちに多く用いられました。
一方マグリットやダリの絵画は、ひとつひとつのモチーフがとても具象的。
しかしモチーフ同士が現実にはありえない場所、ありえない組み合わせで描かれている…「デペイズマン」という技法です。
マグリットの描いた山高帽のシルエットに浮かぶ目・鼻・口を見ていると、現実だと信じている風景は本当に現実なのか?心がざわざわしてきます。
シュルレアリストたちは、さまざまな技法で心の奥底にある超現実を呼び覚まそうとしたのです。
ダリのオブジェなど貴重な展示も
シュルレアリスムはオブジェも超個性的。
特にダリの作品は二度見してしまうものばかり。
女性の頭にフランスパンやらミレーの『晩鐘』の人物が乗っかった『回顧的女性胸像』などは必見です。
著作権の都合上、残念ながら画像をご覧に入れることができませんが、会場でぜひご覧ください。
なんとも理解しがたい作品群は、作者の頭の中のイメージを具現化したもの。
シュルレアリスム作品を観賞するということは、作者の頭の中を覗き見るようなものなのかもしれません。
写真にも広がるシュルレアリスム

モーリス・タバール《無題<自写像のコラージュ>》1930年 東京都写真美術館蔵(前期展示)
シュルレアリスムは写真の分野でも開花しました。
シュルレアリストと親交を持ったアメリカの写真家、マン・レイの前衛写真が広く影響し、多くの写真家たちがさまざまな手法で超現実世界を表現しました。
上の作品はフランスの作家、モーリス・タバールのコラージュ作品。
コラージュとはフランス語で「糊付け」の意で、いわゆる「切り貼り」。
キュビスムのブラックやピカソが先駆者となり、ダダイズムやシュルレアリスムの作家たちによって発展した技法です。
シュルレアリスムとファッション

エルザ・スキャパレッリ イヴニング・ドレスの展示風景 公益財団法人京都服飾文化研究財団
シュルレアリスムは、芸術という枠を超えて私たちの生活へ波及していきます。
イタリア生まれでパリで活動したエルザ・スキャパレッリは斬新なデザインで人気のファッションデザイナーで、ダリとのコラボレーションでも知られています。
写真右側の黒いドレスはシンプルに見えますが、プリントの柄はマッチ棒…メゾンのオートクチュールドレスにマッチ棒?
あり得ない取り合せはまさにシュルレアリスム。
ファッションとシュルレアリスムは親和性が高く、現在でもさまざまなブランドがシュルレアリスムにインスパイアされたコレクションを発表しています。
テーブルの脚は鳥の足

インテリア展示風景
シュルレアリスムのインテリアっていったいどんなものでしょう?
会場で出会ったのがこのテーブル。脚は鳥の足、天板には鳥の足跡!
この展示室にはちょっと不思議なタペストリーや衝立、テーブルなどが並べられており、それぞれのちょっとした違和感が醸し出す妖しいムードが漂っています。
お次は、アートザウルスのクローズアップレポート。脱線気味だけどどうぞおくつろぎください!
拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ
会期:2025年12月13日(土)~2026年3月8日 (日)
前期:12月13日(土)~1月25日(日)
後期:1月27日(火)~3月8日(日)
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
Web:https://nakka-art.jp/exhibition-post/surrealism-2025/
開場時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合、翌火曜日)
年末年始12月30日(火)~1月1日(木・祝)
料金: 一般 1,800円 高大生 1,500円 小中生 500円


