【取材レポート】
「くらしに花咲くデザイン ー 大正イマジュリィの世界」
アサヒグループ大山崎山荘美術館

京都府大山崎町・アサヒグループ大山崎山荘美術館で開催中の「くらしに花咲くデザイン ー大正イマジュリィの世界」展。第二弾となる本レポートでは、展覧会の詳細をお伝えいたします。

山荘に招かれた気分で大正イマジュリィの世界を満喫

情緒あふれる展示空間

秀吉が光秀を討った山崎の戦い。「天下分け目の天王山」中腹に位置するのがアサヒグループ大山崎山荘美術館。築百年を超える山荘の本館と、安藤忠雄氏設計の「地中の宝石箱」(地中館)、「夢の箱」(山手館)から成る美しい美術館です。

どの建物も素敵ですが、特に本館は他の美術館で決して味わうことができない雰囲気が漂う空間。そのため、山荘に訪れたお客様の気分で各部屋をまわりながら観賞することができるのです。

大正ロマンを代表する画家 竹久夢二

展示風景 竹久夢二「婦人グラフ」表紙

大正ロマンを代表する画家といえば、まず浮かぶのは竹久夢二でしょう。
美人画で一世を風靡し、その人気からさまざまな雑誌の表紙や挿絵を手がけました。

「婦人グラフ」の表紙の絵はちょっと大人っぽい雰囲気。
富裕層の女性をターゲットにした雑誌なので、表紙に描かれた女性たちも名家のご令嬢風ですね。

展示風景 竹久夢二「セノオ楽譜」表紙

この展覧会の魅力は、まず何と言っても雰囲気抜群の展示室。アサヒグループ大山崎山荘美術館本館は、関西の実業家であった加賀正太郎氏が大正から昭和初期にかけて建てた山荘を保存・再生した、築100年以上の建物です。

大正時代の作品を、同時期に建てられた山荘で、時代の空気やゆっくり流れる時間を感じながら観賞できるなんて。大正時代にタイムスリップした気分に浸ってしまいます。

ご案内いただいた広報の竹中優香さん

展示されている作品は、本展の監修者で元帝塚山学院大学教授の山田俊幸氏(1947-2024)の貴重なコレクション。
「この展覧会は巡回展ですが、会場によって展示されている作品が少しずつ違います。当館では本館である大山崎山荘のイメージに合う作品が選ばれています。」(広報の竹中優香さん)。

モダンデザインのパイオニア 杉浦非水

『非水図按集』など杉浦非水デザイン作品

竹中さんのお気に入りは杉浦非水だそう。図案化された花や鳥や動物は可愛らしくもあり、それでいて洗練された気品も漂います。

モダンデザインのパイオニアとされる杉浦非水。まだ「グラフィックデザイナー」という認識のない時代でしたが、非水は日本最初のグラフィックデザイナーと称されます。

『非水図按集』など杉浦非水デザイン作品

杉浦非水は三越の母体、三越呉服店の嘱託となり、通販カタログや広報誌など印刷物のデザインを手がけて会社のイメージ戦略の一翼を担いました。
目を惹く大胆な構図と色づかい、それでいて品のあるデザイン。いま観ても斬新です。

新進気鋭の画家たちが手掛けた表紙、挿絵、装丁

藤島武二デザインの表紙展示風景

大正期は白樺派やプロレタリア文学など多彩な文学が生まれた時代でもありました。
文芸誌の発行が盛んになり、人気画家たちの絵が表紙を飾りました。

洋画界の重鎮・藤島武二もそのひとり。
与謝野鉄幹・晶子が発刊した「明星」の表紙は、当時流行したアールヌーヴォーを取り入れたもの。
ミュシャっぽい図案も見られます。

「麗子像」で有名な岸田劉生が描いた「白樺」などの文芸誌の表紙も展示されています。
ちょっと珍しいところでは、人間国宝に認定された陶芸家の富本憲吉の手がけた表紙も!

橋口五葉が装丁を手掛けた 珍寸「吾輩ハ猫デアル」

橋口五葉が装丁を手掛けた「吾輩ハ猫デアル」。これ、見たかったんです!
小さな本ですが、とても凝ったつくり。茶色と赤の地にタイトルと猫が金箔で押されています。

まずタイトルの書体がとても印象的。デジタルフォントには無い独創的な力強さがあります。
表紙をめくった見返しにはヒエログリフを思わせるデザインが施されています。

必見!カラフルで可愛い絵封筒

「子ども・乙女のイマジュリィ」展示風景

ガラス張りの廊下を通って山手館へ。
この会場は、大正時代のトレンドをテーマ別に観ることができます。

「子ども・乙女のイマジュリィ」のコーナーでは、大正時代に出版された子ども向けの雑誌や、当時少女たちの間で流行した絵封筒などが展示されています。
現在の封筒よりも小さな絵封筒。和紙に木版多色摺されておりとてもカラフルで可愛らしく、竹下夢二や小林かいちの絵封筒は女学生にとても人気だったそうです。

幻想的な「怪奇美」の世界

「怪奇美のイマジュリィ」展示風景

この時代、永井荷風や谷崎潤一郎ら耽美派と呼ばれる文学流派がおこり、幻想的で怪奇な物語や冒険譚などが流行します。江戸川乱歩がデビューしたのもこの頃です。
これらの小説にはちょっと不気味で神秘的な挿画が描かれ、その世界観を表現しました。

つい集めたくなってしまう!大正イマジュリィのポストカード

ミュージアムショップ

展覧会のオリジナルグッズが並ぶ本館のミュージアムショップ。
大正モダンのポストカードが遠目でも目を惹きます。大正時代の女学生みたいに、集めたくなってしまいますね。

浮世絵から続く日本の木版画文化と、明治の文明開化でもたらされたアールヌーヴォーなど西洋のデザインが、ほどよいバランスで融合したのが「大正イマジュリィ」。
短くも華やかだった大正ロマンの空気を感じられる展覧会です。

来館者をお出迎えする小さくて素朴な石像

アサヒグループ大山崎山荘美術館美術館は、今年で開館30周年。
というわけで楽しみな企画が目白押しになっています。

3月20日から来年の4月11日までは、安藤忠雄氏設計の「地中の宝石箱」(地中館)で、アサヒグループが所蔵する全8点のモネ作品を2期に分けて10年ぶりに一挙に展示されるんです。
見逃さないように、ぜひHPをチェックしていてください。