【取材レポート】
「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」
愛知県美術館【名古屋市】

会場入口の大型タペストリ-
一時のブームを超えてすっかり浸透した感のある北欧の家具や生活雑貨。
北欧への関心はアートにも向けられ、展覧会で紹介される機会も増えてきました。
そんななか、愛知県美術館ではスウェーデン絵画の展覧会が開催中。
「スウェーデン絵画黄金時代」と呼ばれる19世紀末~20世紀初頭の作品を中心に紹介する日本初の展覧会です。
スウェーデン近代絵画の夜明け

展示風景
最初の展示室には、まだ「スウェーデンらしさ」が確立される前の黎明期、19世紀半ばのフランスやドイツのロマン主義の影響を受けた作品が並びます。
この時代の多くのスウェーデン画家たちは、細やかな自然描写と空想の風景、光と影をドラマティックに表現するデュッセルドルフ派に学んでいました。

マルクス・ラーション《荒れ狂うボーヒュースレーンの海》1857年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
座礁した難破船と岩に打ち付ける荒波。
細かな描写と大胆な光の使い方がとてもドラマティックな作品です。
タイトルのボーヒュースレーンは西海岸の地名。
マルクス・ラーションは、デュッセルドルフ派の影響を受けながらもスウェーデンの自然や歴史に根差した主題をとりあげました。
新たな学びを求めてパリへ

ヒューゴ・サルムソン《落穂拾いの少女》1880年代初頭 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
刈り取られた麦畑に座りこちらを見つめる少女の画は、とても自然で写実的ですね。
デュッセルドルフ派とは明らかに作風が違います。
1870年代後半、王立美術アカデミーの旧態化した教育に不満を持つ若い芸術家たちは、新しく専門的な指導を求め芸術の都パリを目指すようになります。
当時パリでは、伝統的なサロンに対抗し1874年に第一回印象派展が開かれるなど、新しい息吹が芽生えていました。
パリに渡った彼らを魅了したのは、バルビゾン派など人間や自然をありのままに描く自然主義やレアリスム。
母国の豊かな自然の中で育った画家たちにはなじみやすかったのです。
「反逆者たち」オポネンテネ

(左)アーンシュト・ヨーンソン《村人たちの噂話》1886年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
(右)アーンシュト・ヨーンソン《スペインの鍛冶屋》1881年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
フランスで新しい感性を身につけた画家たちは、自国美術界の保守的な態度に不満を表して王立美術アカデミーの改革を唱え、独自の展覧会を開催します。
アーンシュト・ヨーンソンはその中心的な存在。
「オポネンテネ(反逆者たち)」と呼ばれる彼らは、1890年代以降のスウェーデン絵画を牽引していきます。
グレ=シュル=ロワンの芸術家村

展示風景
バルビゾン派のコローやミレーに倣って、戸外での制作に励む者もいました。
彼らの拠点は、パリ郊外の町グレ=シュル=ロワン。
田園生活を送りながら描いた作品は、明るく伸びやかな筆致が印象的です。
後にスウェーデンを代表する画家となるカール・ノードシュトゥルムやカール・ラーションは、この地で飛躍のきっかけをつかみました。
スウェーデンらしさを求めてー日常の小さなかがやき
1880年代終盤になると、フランスに渡った多くの画家は故郷へ帰りスウェーデンらしい独自の方向性を目指すようになります。
彼らが目を向けたのは、身近な家族や仲間たちの姿。
日常の小さなかがやきを丁寧に描きだしていきました。

カール・ラーション《カードゲームの支度》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
これから隣人を招いてのカードゲーム。
ダイニングルームでその準備をしている妻と子どもたちの姿だそう。
家具やインテリアも細かく描き込まれてます。
家族の皆が視線をこっちに向けてて、まるで知人のお宅に着いたときに見る場面のよう。
カール・ラーションは、「スウェーデンらしい暮らしの画家」の先駆者。
パリ郊外グレ=シュル=ロワンで水彩に出会ったラーションは、故郷に戻り日常のあたたかな場面を集めた水彩画集『ある住まい』を刊行します。
室内の装飾や何気ない日常が描かれた、スウェーデンの暮らしがうかがえる画集は人気を集め、世界各国で出版されました。

エーヴァ・ボニエル《家政婦のブリッタ=マリーア・バンク(愛称ムッサ)》1890年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
おや?視線を感じて近づいてみると、ちょっと厳しそうな家政婦さんの肖像。
この女性は、女流画家エーヴァ・ボニエルの家の家政婦さん。
この絵も室内の様子が細やかに描かれていますね

展示風景
スウェーデンの伝統文化を主題とした画家、アンデシュ・ソーンの作品も展示されていました。
民族衣装をまとってリュートを奏でる女性の姿は迫力があります。
現実のかなたへ
さりげない日常生活の描写がスウェーデン絵画の特徴のひとつとすれば、もうひとつは幻想的であること、といえるのではないでしょうか。

グスタヴ・アンカルクローナ《太古の時代》1897年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
薄明りのなか水面を滑るように進むのは、太古のヴァイキング船。
北欧では日没後と夜明け前に、辺り一面が青い光に包まれる時間帯があるそうです。
北欧ならではの自然と、太古の船を組み合わせた幻想的な世界が大きくひろがっています。

(左)エウシェーン・ヤーンソン《首都の郊外》1899年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
(右)エウシェーン・ヤーンソン《テインメルマンスガータン通りの風景》1899年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
どこかムンクを思わせるような画風は、「青の画家」と呼ばれたエウシェーン・ヤーンソンの作品。
黄昏時の青い薄明りの情景はなんとも幻想的。
風景を写し取るだけでなく、心の内面まで表現しているかのようです。
スウェーデンの自然と向き合う

展示風景
かつてスウェーデンは「描くべきもののない国」と評されていたようです。
画家たちは、この国の厳しく豊かな自然にふさわしい表現を模索し続けました。

カール・ノードシュトゥルム《テューン島のホーガ盆地》1897年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
本展のメインビジュアルにもなったこの絵は、画家ノードシュトゥルムの故郷の風景。
ポール・ゴーガンの作品から着想を得、スウェーデンの国土を描きました。
空、草原を平面的にとらえた構図に不思議な静けさが漂います。

ニルス・クルーゲル《夜の訪れ》1904年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
スウェーデンの風景で印象的なのは「光」。
北欧の夏の夜を象徴する青い光が、小高い丘で草をはむ馬をぼんやりと照らし出しています。
壮大で幻想的な光景です。

解説していただいた担当学芸員の白鞘南海さん
グスタヴ・フィエースタード《川辺の冬の夕暮れ》1907年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
スウェーデン絵画の特徴である「身近な日常の温かい生活風景」と「静謐で幻想的な風景」。
対照的に思えますが、静かで穏やかな時間の流れをどちらにも感じるのです。
近代スウェーデン絵画の成り立ちを解説していただいたのは、学芸員の白鞘南海さん。
わかりやすい説明で、なじみのなかったスウェーデン絵画のことが知れて大満足でした。
フォトスポットやオリジナルグッズも

イケアとのコラボレーションによるフォトスポット
スウェーデン発祥で世界最大のホームファニッシングブランドといえば!そうイケア。
会場にも、ダイニング家具や食器、インテリア雑貨を用いたフォトスポットがありました。
カール・ラーションの《カードゲームの支度》のようなセットと一緒に、一枚いかが?

展覧会特設ショップのダーラナホース
かわいいお馬さんたちは「ダーラナホース」。
スウェーデン中部のダーラナ地方発祥の木彫りのマスコットで、幸せを運ぶ馬として古くから愛されているそうです。
ショップには、ダーラナホースをモチーフとしたあみぐるみや手ぬぐい、特製バッグなど可愛いグッズがいっぱい。作品の鑑賞が終わったら、幸運もぜひ一緒にお持ち帰りください。
アートザウルスをご愛読の皆様に感謝を込めて、本展のご招待券を3組6名様にプレゼント!
下のボタンから奮ってご応募ください。
スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき
会期:2026年7月9日(木)~2026年10月4日(日)
会場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
Web:https://www.swedishpainting2026.jp/
開館時間:10:00~17:00 金曜は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日(ただし8月10日、9月21日は開館)、9月24日(木)
料金: 一般 2,000円 大学生 1,200円 高校生 700円 中学生以下無料


