AiRK(アーティスト・イン・レジデンス神戸)訪問レポート

「アーティスト・イン・レジデンス」。
国内外のアーティストが一定期間居住し、調査や作品制作を行う滞在型創作活動、またそれを支援する事業のことです。

このプログラムを実施する団体が日本各地で増え、いまでは100以上の拠点があるといわれています。
各地の自治体が事業主体になっている場合も多いので、ご存じな方もいるかもしれません。

今回は、神戸市北野にある『アーティスト・イン・レジデンス神戸』通称AiRKを訪れました。そこではどんな活動をされているのか、実際のところをレポートします。

異国情緒あふれる神戸・北野のアーティスト・イン・レジデンス

AiRK外観

みなとまち神戸、なかでも北野地区は異人館街で知られる異国情緒あふれるエリア。

リゾート感覚漂う静かな裏通りにひっそりと建つネオクラシックな洋館。
外国人向けに建てられた築60年を数える3階建てマンションの2-3階フロアが、AiRKの活動拠点になっています。

アーティストが滞在できる施設を神戸に AiRK誕生

ご案内いただいた代表の松下麻理さん

AiRKが始動したのは2022年4月。
ちょうど神戸で映画を撮影していた地元出身の俳優/ダンサーの森山未來さんが、フィルムコミッション担当だった松下さんに「神戸にアーティスト・イン・レジデンス(以降AIR)をつくりたい」と相談したのがきっかけでした。

海外でAIRを体験し、その存在意義を熟知する森山さん。
彼の思いを汲んだ松下さんらは物件探しを開始し、北野で見つけた外国人向けマンションをAIRとして整備しました。
こうして松下さん、森山さんら8人でAiRKの運営を続けています。

リビングのバルコニーから広がる北野市街地のビュー

アーティストたちはAIRで暮らしながら、街の風景や文化、人びととのつながりを自分の作品に落とし込んでいきます。
肖像画を描くアーティストは近隣の人々にお願いして描かせてもらったり、映像クリエーターは街を撮ったり。

明治以降、北野は多くの外国人が暮らしてきた街。誰でも自然に受け入れる土地柄だから、国内外から集うアーティストが馴染みやすいんだそう。

レジデンスのリビングルーム

「宿泊じゃなくて、『暮らす』感覚が大切なんですよ」と、松下さん。

国内外から集うアーティストたちは、それまでの日常と違った環境で暮らし、新たな地域の人々と交流を持ち、その体験を通して創作のインスピレーションを高められるからです。

簡素だけどなんだか落ち着くベッドルーム

この物件はもともと外国人が暮らすアパートメントだったため、トイレ付きの広いバスルームやメイドさん用の部屋まである、日本ではあまり見かけないつくり。

アーティストのための部屋は5部屋用意されていて、それぞれが1か月〜3か月の間、ここで暮らしながらリサーチや制作に取り組むことになります。

滞在するアーティストは国籍もジャンルもさまざま

テーブルには使いかけのペン類。いまにもササっと描いてくれそう

滞在するアーティストは、出身国も違えば、画家、現代アート、ダンサー、映画監督、音楽家などジャンルもさまざま。

AiRKは独自に国内外のアーティストを招聘すると同時に、市内のさまざまな文化施設と提携していて、各々のプログラムに参加するために神戸を訪れたアーティストの滞在先としても機能しています。

共用キッチンは国際色豊か

キッチンは滞在者みんなで使います。
だから置いてる調味料もインターナショナル。

『これ使ってもいいよ~』なんて貼紙からも、みんな仲良さそうなのがうかがえます。
めいめいのお国の手料理を作りあいっこしてパーティーしないわけがない。
アーティスト同士の交流、ここで培った絆は人生の財産になることまちがいなし。

この街で暮らしながら作品と向き合う

暮らしたアーティストたちが残していった想いのカタチ

感性豊かで表現意欲あふれるアーティストたち。
そんな彼らがこの場所に滞在していた名残りがたくさん見つかります。

窓に貼りついた空飛ぶカエル。実はこのカエル、とても出世したんです。
2024年に滞在したイギリス人アーティスト、サム・ワイルドさんが制作したカエルは、この発展形がロンドンのビクトリア&アルバート博物館(V&A)で展示されたそうです。

アーティストの成果発表の場

展覧会会場のローズガーデン

アーティストが過ごすレジデンスプログラム。
その最後を飾る、展覧会やトークイベントなど研究・制作の成果発表の場が設けられます。

ちょうど、まもなくAiRKでの約1か月半のプログラムを終える台湾出身のアーティスト、レイ・ホァンさんの展覧会が、ギャラリービル「ローズガーデン」で開催されていました。

異人館通りにあるローズガーデンは、世界的建築家・安藤忠雄氏による初期の名作。凝った構造の建築で、レンガ造りの外観がステキに街に映えています。

展覧会会場となったRose 201

階段を上ると、展示会場になっていた開放的なガラス張りのギャラリールーム。
室内には、熱心に作品を観るお客さんがいらっしゃってますね。

台湾出身のアーティスト レイ・ホァンさん

今回、成果発表の展覧会を開いた台湾出身のアーティスト、レイ・ホァンさん。
台湾とニュージーランドを拠点とする作家さんです。

お見かけはスレンダーで上品なのに動作が俊敏!全身の表現力に長けてる人なんでしょう。

イラストや刺繍で表現される物語

可愛らしいイラストと刺繍で語られるのは、彼女がこれまでテーマにしてきた創作シリーズ。
20世紀半ば、砂糖産業が盛んだった台湾の農村での2人の女性の悲しい別れの物語『Fields of Sugar』です。

神戸での滞在を経た今回の個展では、このシリーズの舞台を神戸に移した新作『Shades of Blue』をお披露目。
ストーリーの設定が日本だと読んでて断然親近感がわきます。

神戸での新たなチャレンジ

色とりどりの刺繍糸や刺繍枠

制作に使用する素材、画材なども並んでいました。
ケースいっぱいに詰まった刺繍糸は神戸で購入したもの。

新しい材料を使ってみたり、布ではなくキャンバスに直接刺繍したりと新たな方法にもチャレンジしたそうです。

《屋上の青》

神戸滞在中に制作した作品。昭和50年代頃の大丸神戸店の屋上からの風景です。
これまでは画面にぎっしり描きこむことが多かったそうですが、滞在中に余白の大切さに気づいたそう。
この作品も余白がとられていますね。

「作品にも人にも余白は必要。今後も余白を意識した制作をしていきたい」と語ってくれました。

会場風景

AiRK滞在中に知り合った人、行きつけになったカフェのご主人などが次々に会場を訪れ、地域とのつながりが感じられるアットホームな一幕でした。
お祝いに贈られた花も国際色豊かです。
でもどうしてウルトラ怪獣のミクラスがここに⁉

アーティストの成果発表会やアーティストトークは頻繁に開催されています。
アーティストから直接話を聞ける機会。
どなたでも気軽に参加できますので、AiRKのホームページをチェックしてぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。

美術館で歴史的名作を巡るのも素敵ですが、こうした現在進行形のアートを体感するのも、アーティストの生のエネルギーが感じられてとても楽しいですよ!

パートナーとともに歩むAiRK

これから、あるいは今まさに成長しつつあるアーティストをインキュベートするAiRK。

AiRKは企業や個人から支援を得て運営しています。
個人でも「パーソナルパートナー」として月々500円から参加することができるので、AiRKの活動に興味を持った方、応援してみたいという方はぜひ下記URLをチェックしてみてください。