【取材レポート Vol.2】
歌川国芳展ー奇才絵師の魔力
愛知県美術館【名古屋市】

会場風景
いよいよ後期展示が始まった愛知県美術館「歌川国芳 ー奇才絵師の魔力」。
大半の作品が入れ替わり、前後期あわせて約400点が展示されるという壮大な展覧会です。
本記事は前期展示のレポートですが、今回は展覧会の魅力を前回のレポートとはちょっと違った角度からご紹介します。
「これから見に行く!」人はもちろん、「前期展見たよ」という人も振り返りながらご一読ください。
(※写真は全て許可を得て撮影しています)

《相馬の古内裏》大判三枚続 1845~45年頃 (通期展示)
歌川国芳といえばこの作品を思い浮かべる人も多いはず。
画面左のお姫様は、実は平将門の遺児で妖術使い。父の無念を晴らそうと謀反を企てます。
妖術で巨大な髑髏を操る図柄は迫力満点。髑髏のリアルな表現は、西洋の解剖学を取り入れたともいわれています。
会場には武者絵や戯画など有名な国芳作品がずらりと展示され、見ごたえたっぷり。
今回はちょっと視点を変えて、見逃しがちな佳作にスポットを当ててみたいと思います。
貴重な当時の版木

《「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」版木》1847年頃 右は新摺品 (通期展示)
国芳の有名な作品「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」の貴重な版木です。
よく見ると、文字の細い線もすっきりきれいに彫られています。
錦絵と呼ばれる多色刷りの浮世絵版画。色の数だけ必要な版木は、どうやって正確に位置をあわせて彫るのでしょう?
まず絵師が墨で薄紙に版下絵を描き、裏返して板に貼りつけ彫師が彫る。これが墨版。
この墨版で摺師が何枚か摺ります。その下絵の複写に、赤、青、緑など色をつける部分を描き込んでいきます。その紙をきっちり版木に貼って彫ると、位置の合った色版が出来上がるというわけ。
西洋画の遠近法や影を取り入れた作品

《忠臣蔵十一段目夜討之図》横大判 1831~32年 (通期展示)
これは赤穂浪士が吉良邸へまさに討ち入ろうとしている瞬間。
でも何だか風変わりな印象を受けませんか?
忠臣蔵をテーマにした絵は数多くありますが、どれも勇ましい絵柄ばかり。
でもこの絵は、高い塀を黙々と登っていく浪士たちが小さく影絵のように描かれている。
武家屋敷にしてはずいぶん高い塀だし…?、その答えは作品の横のパネルにありました。

『東西海陸紀行』(ニューホフ著)1682年 (通期展示 ページ替えあり)
国芳はこの本の図を参考にしたのですね。
研究熱心な国芳が西洋の遠近法や影を取り入れていたことの証左です。
次に前期展示作品の中から気になった作品をご紹介。まずは「影」に着目します。

《東都名所 かすみが関》横大判 1832~33年 (前期展示)
タイトルは「かすみが関」。江戸時代、東京の霞が関には大名屋敷が並んでいました。
結構急な坂だったようで、人夫が前かがみになって荷車を引いています。
日傘をさした女性とお付きの男性の足元には短い影が描かれています。
初期の浮世絵は影が描かれませんでしたが、19世紀に入ると影を効果的に使った作品が現れます。
国芳も西洋画の技法を研究し、作品に取り入れました。

《雪月花 月》大判 1824年 (前期展示)
この大胆な陰影表現!美人画なのですが、月明かりの格子窓から差し込む影が主役といって差し支えないでしょう。
ちょっぴり「おきゃん」な女性たち

(左)《夏げしき昼夜どけい ひる七つ時》団扇絵版 1844年頃 (前期展示)
(右)《夏げしき昼夜どけい 夜四つ時》団扇絵版 1844年頃 (前期展示)
国芳の描く女性はどれも動きがあって生き生きとしています。
この作品は夏の風物詩を描いた団扇絵。
夏の夕、打ち水する奉公人の娘と団扇片手の女主人のくつろいだ様子や、満月を見ようと二階から身を乗り出す娘が描かれています。
美人画ですが、おしとやかというよりも快活で生活感のある女性たちです。

《新板子供遊びの内 雪あそび》横大判 1841~42年頃 (前期展示)
子どもたちが雪遊びをしている様子が生き生きと描かれています。
左端の雪だるまに注目!
江戸時代の雪だるまは本当に「だるま」だったんですね!

会場風景
今回のレポートはいかがだったでしょうか。
国芳の名声を高めた武者絵やユーモアあふれる戯画、貴重な肉筆画が一堂に会した見ごたえのある展覧会です。
会場には撮影スポットも設けられていますのでぜひ一枚、記念にいかが!?
歌川国芳展ー奇才絵師の魔力
会期:2026年4月24日(火)~2026年6月21日(日)
【前期】4月24日(火)~5月24日(日)【後期】5月26日(火)~6月21日(日)
会場:愛知県美術館
https://www.ctv.co.jp/kuniyoshi/
開館時間:10:00-17:00/金曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜日
料金: 一般 1,800円 大学生 1,000円 高校生 800円


