【取材レポート】
「ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界」
神戸市立博物館<神戸市>
幕末・明治期に活躍した絵師・河鍋暁斎。
近年は奇才・歌川国芳の評判が高いようですが、暁斎はたった7歳でその門下に入った人。
その後狩野派で本格的な技法を取得し、手掛けた画題は神仏から動物、妖怪、戯画まで多岐に渡りました。
確かな画力とユーモアあふれる描写で、国内外で今なお高い人気を誇る暁斎の世界に触れてみましょう。
世界屈指の暁斎コレクターのコレクション展

ロビーの巨大看板
本展は、世界屈指の暁斎コレクターであるイスラエル・ゴールドマン氏のコレクションから選りすぐった約110点を紹介するもの。
そのうち過半数の約60点が日本初公開の作品です。
約1,000点もの暁斎作品をコレクションしているというイスラエル・ゴールドマン氏。
記者説明会当日、会場に登場した氏は、暁斎の何に惹かれたのかという質問に、”He’s funny!” と応え、会場の笑いを誘いました。
名品ぞろいのコレクション

河鍋暁斎《地獄太夫と一休》明治4~22年(1871~89)イスラエル・ゴールドマン・コレクション
展覧会のメインビジュアルでもあるこの作品。目を惹くのは、太夫の着物の細やかな筆づかい。「画鬼」と称されたほどの類まれな技量です。
この絵は、自らを「地獄」と名乗る遊女と禅僧・一休宗純の出会いの場面を描いたもの。
暁斎は、西洋の解剖学図で骸骨の描写を学んでいたそうです。
太夫の後ろには三味線を弾く骸骨の頭の上で踊る一休さん、そのまわりで小さな骸骨が踊っているのが何ともシュール。
暁斎の名を一気に高めた「鴉」

(左)《枯木に夜鴉》1871年~1889年 (中央)《枯木に鴉》1871年~1889年 (左)《旭日に鴉》1883年~1889年 イスラエル・ゴールドマン・コレクション
「鴉」は暁斎の名を一気に高めた画題でした。
1881年の第二回内国勧業博覧会の絵画部門に《枯木寒鴉図》を出品し、最高賞を受賞して以来、暁斎のもとには国内外から鴉図の注文が多く寄せられるようになりました。
ゴールドマン コレクションのこの3点も、注文を受けて描かれたものと思われます。
ユーモアあふれる「けもの」たち

河鍋暁斎《象と子熊》慶応元年(1865)頃~明治3年(1870)イスラエル・ゴールドマン・コレクション
まずはゴールドマン氏がコレクションを始めるきっかけになったという《象と子熊》。
氏は一度この作品を手放してしまいますが、夜中に目を覚ましてしまうほど後悔し、何年もかけて買い戻した作品。
現在は寝室に大切に掛けられているそうです。

河鍋暁斎《蛙の学校》明治零年代中頃(1870年代前半)イスラエル・ゴールドマン・コレクション
蛙の学校の授業?明治の文明開化で始まった西洋式の学校教育は、暁斎の目に新鮮に映ったのでしょう。
蛙の話す声が、現代の漫画のように口から吹き出す線で表されてます。

河鍋暁斎《鼠を捕らえた猫》明治4~22年(1871~89)イスラエル・ゴールドマン・コレクション
暁斎作品の中でもよく登場する、短い尾と茶色のまだら模様の猫です。
この作品は布に描かれたもの。まず絵を描いて、その部分を蝋などで覆ってから布地を染めたようです。

(左)《猫又図》1871年~1889年 (右)《石灯籠の上で寝る猫》1871年~1889年 イスラエル・ゴールドマン・コレクション
尾の先が2つに分かれた猫は、年老いた猫が化けた「猫又」。
手拭いをかぶって人間のように振舞う妖怪です。
左は手拭いをかぶって石灯籠の上でノリノリで踊る猫又。
右側は、踊り疲れたのか手拭いも落としてぐったり眠ってるのが微笑ましい。

美しい会場造作にもご期待
会場上空に妖怪たちのタペストリ-!ダウンライトの間にぼんやり照らされて見栄え良し。
会場のあちこちで暁斎の絵のキャラクターが出現するのも楽しいですよ。
暁斎「ひと」を描く

河鍋暁斎《暁斎絵日記》明治15~16年(1882~83)<明治16年10月20日か コンドル宅での稽古の様子> イスラエル・ゴールドマン・コレクション
暁斎は晩年まで日記を描き続けていました。
絵日記には家族や弟子、自宅に出入りした人々が登場します。
寝そべっている外国人は、日本画を学ぶために暁斎に師事していたジョサイア・コンドル。
この絵は稽古の様子ですが、コンドルは正座ができないので寝そべっていたそうです。

河鍋暁斎《放屁合戦図》明治14年(1881)イスラエル・ゴールドマン・コレクション
コレクターのゴールドマン氏が暁斎を”funny!”と評する筆頭理由の作品。
放屁合戦は、平安時代からともいわれるわが国伝統?のユーモア。
ちょっとお下品ですが。

河鍋暁斎《三味線を弾く洋装の骸骨と踊る妖怪》明治4年~12年(1871~79)イスラエル・ゴールドマン・コレクション
明治に入り「西洋風」がもてはやされますが、暁斎はそんな風潮を揶揄しました。
洋装にシルクハットの骸骨が弾いているのは三味線。
文明開化なんて上面だけさ、とでも言いたげです。
妖怪も、鬼も、神仏も 自由自在

河鍋暁斎《百鬼夜行図屏風》明治4年~22年(1871~89)イスラエル・ゴールドマン・コレクション
妖怪の大行進を描いた百鬼夜行図。暁斎は六曲一双の屏風に仕立てました。
左上に大きな火が現れて慌てている妖怪たち。
どれも表情豊かで、見飽きません。

河鍋暁斎《目利きの鍾馗》明治4~5年(1871~72)頃 イスラエル・ゴールドマン・コレクション
厄除け、魔除けの神様『鍾馗』。
掛軸を眺める鍾馗と、酒を温めている鬼の姿も見えます。
さらっと描いているようで、実に細かな描写です。

河鍋暁斎 橘機郎《五聖奏楽図》明治4~20年(1871~87)イスラエル・ゴールドマン・コレクション
扇を持ったキリストを見上げる日本の神、三味線を弾く釈迦、笛を吹く老子、鼓をたたく孔子。
一枚の画に異なる宗教の神がそろい踏みしています。
明治期の混沌とした宗教状況を皮肉った作品ですが、現代の日本だってこの頃とあまり変わってないかもしれませんね。

河鍋暁斎《名鏡倭伝 新板》明治7年(1874)9月 イスラエル・ゴールドマン・コレクション
暁斎は版画作品も残しています。
ゴールドマン コレクションの版画はとても保存状態が良いのが特徴。
150年前のものとは思えないほど色鮮やかです。
浮世絵美術商・ゴールドマン氏のこだわりが感じられます
暁斎を知らない人も楽しめる展覧会
オーナーのゴールドマン氏が言うように、暁斎作品は親しみやすさ、面白さが魅力。
一見さらりと描かれたような作品の中に、国芳ゆずりの自由な発想と狩野派で学んだ確かな技術が光っています。
そこもぜひ会場でお確かめください。

特設ショップのオリジナルグッズ
展示会場出口の特設ショップには、ポストカードやTシャツ、マグカップなど楽しいオリジナルグッズが並びます。
中でもひときわ目立ってたのがお立ち台の上の猫又ぬいぐるみ。
此奴にならってハッチャケちゃえば、日頃のストレスだって発散できるかも⁈
アートザウルスをご愛読の皆様に感謝を込めて、本展のご招待券を2組4名様にプレゼント!
下のボタンから奮ってご応募ください。
ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界
会期:2026年7月11日(土)~2026年9月23日(水・祝)
前期展示/7月11日(土)~8月16日(日)
後期展示/8月18日(火)~9月23日(水・祝)
会場:神戸市立博物館
Web:https://kyosai2026.exhibit.jp/
開館時間:9:30~17:30(金と土は20時まで開館)(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)
料金: 一般 2,000円 大学生 1,000円 高校生以下無料


