【取材レポート】
「ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち ヴァルラフ=リヒャルツ美術館所蔵」
あべのハルカス美術館【大阪市】

会場エントランス
大阪・あべのハルカス美術館で「ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち」が開催中です。
ヨーロッパ有数の規模を誇る、ドイツ・ケルン市ヴァルラフ=リヒャルツ美術館・コルブー財団。
そこからフランス印象派とその時代のコレクションを紹介する展覧会です。
印象派前後に特化した展覧会

浅野秀剛館長の挨拶
注目の展覧会ということで記者内覧会にも多くの記者たちが集まりました。
タイトルの「ゴッホの跳ね橋」が目を集めがちですが、この展覧会は粒の揃った名品揃いなんです。
本展は、印象派の誕生、そして印象派以前の作品や印象派から20世紀の美術にどうつながっていくのかを俯瞰する趣向。
作品の展示も、あえて「作家の生年順」という方法を選択しました。
さてどんな展覧会になっているのか楽しみです。
(※掲載作品はすべてヴァルラフ=リヒャルツ美術館・コルブー財団所蔵 Wallraf-Richartz-Museum & Fondation Corboud, Cologne, Germany)
風景画の確立

ウジェーヌ・イザベイ《漁からの帰り》1845年頃 油彩、厚紙
Eugène Isabey 《Return from Fishing》 c.1845 Oil on cardboard
最初に、印象派がどんな時代背景の中で誕生したかをちょっとおさらい。
まずはこちらの風景画。意外なことに、当時「風景画」は新しいジャンルだったとのこと。
この時代は、フランスの王立アカデミーによって絵のジャンルにヒエラルキーが確立されていました。「歴史画」、次に「肖像画」の価値が高く、次に「静物画」と続いて「風景画」は、モチーフが神話や歴史なら「歴史的風景画」として認められるに過ぎませんでした。
産業革命が絵画に与えた影響

「ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち ヴァルラフ=リヒャルツ美術館所蔵」展示風景
風景画の確立には、19世紀に起こった産業革命が大きく影響しています。
裕福な市民層が誕生したため、家に飾るための静物画や風景画が求められるようになりました。
また鉄道の発達で行けるようになった遠隔地の景色も好まれ、風景画がジャンルとして成立します。
レアリスムを宣言したクールベや、戸外で絵を完成させるスタイルを確立したブータンが登場し、後の印象派の画家たちに大きな影響を与えました。
フォンテーヌブローの森とバルビゾン派

「ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち ヴァルラフ=リヒャルツ美術館所蔵」展示風景
印象派が影響を受けたもうひとつの動きがバルビゾン派です。
フォンテーヌブローの森を舞台に制作活動した彼らは、戸外でスケッチして室内で絵を仕上げる方法で目の前の自然や、そこで働く農民の姿を描きました。
コローやミレーがよく知られています。

ジャン=フランソワ・ミレー《横たわる裸婦》1846/47年 油彩、カンヴァス
Jean-François Millet《Resting Nude》1846/47 Oil on canvas
この美しい裸婦の絵が、あのミレーの作品と聞いてちょっとびっくり。
ミレーって「落穂ひろい」や「晩鐘」みたいな「慎ましい農民の姿を描いた清貧の画家」だったのでは?
実はミレーはこうした裸婦の絵で生活を成り立たせていたそう。
彼の裸婦の絵はとても売れたらしいですよ。
印象派の前身 バティニョール派

エドゥアール・マネ《アスパラガスの束》1880年 油彩、カンヴァス
Édouard Manet《A Bunch of Asparagus》1880 Oil on canvas
マネは挑発的な裸体画を描くなどしてスキャンダルを起こしたことで知られる画家です。
サロンの伝統を揺るがすマネの絵。保守的なサロンに不満を持つ若い画家らは、マネのアトリエのあるバティニョールのカフェに集まるようになりました。
バティニョール派と呼ばれるこのグループにはモネやルノワールやピサロが参加し、印象派の前身を形成します。
印象派の誕生

「ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち ヴァルラフ=リヒャルツ美術館所蔵」展示風景
マネのもとに集まったモネやルノワール、ピサロらは、1974年、サロンを出て独自の展覧会を開催。
後に「第1回印象派展」と呼ばれる展覧会です。
出品されたモネの「印象、日の出」を見た批評家が「印象しか捉えていない未完成の絵」と中傷したところから「印象派」と呼ばれるようになりました。
光の移ろいを捉える

クロード・モネ《エトルタの浜辺の漁船》1883/84年 油彩、カンヴァス
Claude Monet《Fishing Boats on the Beach of Étretat》1883/84 Oil on canvas
徹底的に「光」にこだわったモネ。
朝の光、夕方、晴れた日、荒れた海などさまざまな光を観察し、移ろいゆく一瞬をキャンバスに捉えようとしました。
絵具をパレットで混ぜずに直接キャンバスに置いていく「筆触分割」という印象派の手法は、混色による濁りがなく、戸外の明るい光や水のきらめきを再現するのに好適でした。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《縫物をするジャン・ルノワール》1898年 油彩、カンヴァス
Pierre-Auguste Renoir《Jean Renoir,Sewing》1898 Oil on canvas
人物の描写に力を入れたのはルノワール。
可愛らしい女の子…?いえ、実は男の子なんです。描かれているのはルノワールの次男。
西洋では魔除けの意味で男の子に女の子の恰好をさせる風習があったんだそう。
ルノワールは筆触分割の技法に限界を感じ、印象派を離れ古典に回帰した時期がありました。
その後、古典の技法と印象派の技法を取り入れ、独自の色づかいの作品を描きました。
新印象派の登場

ポール・シニャック《カポ・ディ・ノリ》1898年 油彩、カンヴァス
Paul Signac《Capo di Noli》1898 Oil on canvas
この作品は、ご覧の通り全て点描で描かれたもの。
第8回印象派展で、ピサロは点描画のスーラやシニャックを筆触分割の発展形としてグループに加えようとしました。
これを聞いたメンバーは猛反発。科学的理論立てに基づくスーラやシニャックのアプローチは印象派とは相容れず、これが要因となって印象派は分裂に至ります。
ポスト印象派

ポール・セザンヌ《梨のある静物》1885年頃 油彩、カンヴァス
Paul Cézanne《Still Life with Pears》c.1885 Oil on canvas
印象派展は終焉を迎えますが、印象主義から影響を受けつつ独自の技法を編み出したセザンヌ、ゴッホ、ゴーガンら「ポスト印象派」が次の時代を形成していきます。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ニューネンの農家》1885年 油彩、板にカンヴァス
Vincent van Gogh《Farmhouse in Nuenen》1885 Oil on canvas mounted on wood
展示されているゴッホ作品2点は、まるで別人が描いたように雰囲気が違ってます。
上の作品はオランダ時代のもの。
ミレーに憧れて素朴な農民の労働や暮らしを描いていました。
この時代の作品はどれも暗い色調が特徴です。

フィンセント・ファン・ゴッホ《跳ね橋》1888年 油彩、カンヴァス
Vincent van Gogh《The Drawbridge》1888 Oil on canvas
それからわずか3年後、アルルの地で描いたのが『跳ね橋』です。
オランダからパリに出たゴッホは印象派や新印象派など新しい潮流に触れ、それまで重苦しかった色調が明るく変ります。
やがて都会での生活に疲れたゴッホは、浮世絵で見たような鮮やかな風景を求めて南仏・アルルへ。
明るい太陽の下、ゴッホは心を躍らせながら制作に取り組みました。
ゴッホはアルルの跳ね橋を油彩では5点描きましたが、これはその最後の作品。
空も広く水面も広く、穏やかな雰囲気です。
気持ちいい日差しの明るさが際立つ色使いです。
最初に描いた『跳ね橋』は来年「大ゴッホ展」で日本にやってくるので、見比べてみるのも楽しみですね。
20世紀絵画へ

「ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち ヴァルラフ=リヒャルツ美術館所蔵」展示風景
印象派からポスト印象派へ受け継がれた流れは、マティスやヴラマンクが中心となったフォービスム、ドニやボナールらがゴーガンの影響を受け結成したナビ派などの20世紀絵画へと連なっていきます。
ゴッホと印象派だけでなく、その前後もお見逃しなく。
特に新印象派の点描画は図録などで見るとぼんやりした印象ですが、実際の作品をちょっと離れてみるととても美しい!ぜひ実物をご覧になってください。

特設ショップのチロルチョコはお土産におすすめ
お楽しみの特設ショップにはオリジナルグッズが並びます。
展示作品が描かれたチロルチョコは手軽なお土産にオススメ!作品談義しながら、皆さんで味わってください。名画体験を羨ましがられること請け合いですよ!
※本展は、一般入場券1枚につき中小生1名無料となる「お子様特別ご招待」が実施されています。
この機会にぜひお子様とご一緒に名画を観賞してはいかがでしょうか。
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ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち ヴァルラフ=リヒャルツ美術館所蔵
会期:2026年7月4日(土)~2026年9月9日(水)
会場:あべのハルカス美術館
(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階)
Web:https://www.ktv.jp/event/gogh_hanebashi/
開館時間:火~金 10:00~20:00 月土日祝 10:00~18:00
※入場は閉館の30分前まで
料金: 一般 2,100円 大高生 1,700円 中小生 500円
●お子様特別ご招待 各種一般1枚につき、中小生1名無料(2人目からは通常料金)
※有料観覧券に限る※大人と同時入場に限る
●障がい者手帳をお持ちの方は、美術館チケットカウンターでご購入されたご本人と付き添いの方1名まで当日料金の半額


